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コンペお断りします

先日コンペのお話をお断りしました。
クライアントとの間に代理店さんが入っていたお仕事だったのですが
年に一度、数年間担当させていただいたお仕事。
今年からデザインコンペにしたい、とのことでお断りさせていただきました。

僕は独立以降、コンペのお話はお断りしてます。
それには4つの理由があります。

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理由のひとつめは、こちらのこと。

お客さんが、いろいろな提案から考えたいのは、もちろんわかります。
ただ、その提案をするために、僕たちが動いていることも知っていてほしい。
その案を考え作るために、今までの経験を動員して、新しい調査をして、
時間を費やしてかたちにしていきます。
それを無償で提供することは、僕の首が絞まるだけではなく
デザインやデザイナーの価値を落とすことにつながります。

よく勘違いされていることのひとつに、僕たちの作業時間があります。
Macに向って作業するのはデザイン工程のほぼ最終段階で
その前にヒアリングをしたり、資料を集めたり、打ち合わせをしたり、
アイディアを考えたり、レイアウトを考えたり…
いろいろな工程を経ていきます。
料理と一緒で、キッチンで調理するのは最終段階で、
そのまえに食材を仕入れたり、レシピを考えたりしています。

それらの工程を無償でのご提供は、できないのです。

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ふたつめは、お客さんのために。

コンペは、独自のルールを持ったゲームに近いです。
もし、本気でコンペを取ろうとしたら、いろいろな手段が使えてしまいます。
(政治的な裏ルートは置いといて、純粋な制作物でお話しするだけでも)
そのコンペで求められる本当の目的に即したものは
一番効果が期待できるものは
コンペというゲームの中では弱いことがあります。
見栄えがしないのです。

ある病気の患者さんのためには、塩分を抑えた食事の方がいいのに
それではおしくないから、味を濃くしておいしくしちゃうような
必要以上に豪華に盛りつけて、いかにもおいしく見せちゃうような…
そんな、本来の目的からはずれたところで、判断されることもあります。
そして、そのふたつの料理を並べて出されると
どちらが本当に身体のためにいいのか…判断するのは難しいのです。

そうなると、僕らはプロなので
コンペ用のものを作ることができるのです。
最終的に届けたい人の心に届くものではなく
コンペの勝ち負けを決める人が、「いいね!」って言っちゃうものを
作ることもできるのです。
それって、お客さんのためになるでしょうか。
コンペは、本来の目的の前に「コンペに勝つ」という
邪道な目的が発生してしまいます。

もちろんコンペにも勝ち、最終的に届けたい人にも届く
強いものやバランスのいいものが生まれることもありますが…
でも、それってコンペじゃなくてもできます。

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みっつめは仕事の効果を考えて

毎年コンペをしているものってありますよね。
目新しさだけを追求するなら、間違ってはいないかもしれませんが
効果は上がらないでしょう。
僕たちデザイナーの能力のひとつに
「精度を高めていく」というものがあります。
「なにかを作れる」のと同じくらい大切な能力です。
続けて作ることで、一度目の結果からブラッシュアップしていけるんです。
効果的なものはより効果的に。
期待していた効果が発揮できなかったものは、改善をして。
作るたびに精度を上げていきます。
毎年コンペをするのは、その経験を放棄して精度を下げていくようなものです。

だから、コンペというのはお客さんのためにならないと考えています。
コンペのテーブルに並んだ僕たちの目は
お客さんの望みをかなえたい!と思っているのか
お仕事(お金)がほしい!と訴えているのか
どちらなのでしょう。

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最後はお互いのために。

僕たちデザイナーは、目的に合わせてコンセプトを設定します。
コンセプトによってアプローチや表現は様々に変化します。
チカラのあるデザイナーは様々な表現ができます。

もし、いろいろな案を見たいのなら
愛のない10人を集めるより、信頼できるデザイナーにお願いをするべきです。
もし、予算に制限があるのなら
信頼できるデザイナーに相談してみてはいかがでしょうか。
きっと予算内でできる方法や、予算を抑えた別の提案をしてくれるでしょう。
もちろん、その予算で出来ないことは、きっちり出来ないとも言われるでしょう。

コンペでパートナー候補をたくさん並べることはできるのかもしれません。
でも、それでお互い愛情を持って仕事できるのでしょうか。
愛のない仕事って、悲しくないですか。
そして、愛のない仕事で出来上がったものはやっぱり弱いのです。
きれいに作られてるようで、中身がすかすかのものが出来てしまいます。

お互いが信頼関係を築き
お客さんとデザイナーが信頼という愛情でつながったとき
大きなパワーを発揮できます。
ぜひ、信頼できるデザイナーを見つけていただきたいです。

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もちろん、コンペという状況に置いても
真摯にお客さんと向き合い
素晴らしい提案をするデザイナーもいます。
でも、だからこそ、そんなデザイナーとは
もっとじっくりと話し合ってほしいのです。
もっともっとブラッシュアップしていけるはずです。

僕はわりと血の気が多くて
勝ち負けも嫌いじゃなく
コンペは、はじまってしまうと一種の高揚感もあって
ゲームとしては、楽しくも感じてしまいます。

でも、そんな形になるかどうかわからない
博打的なものに、大きなパワーや時間は割けません。
その限られたリソースを僕は、
僕を指名してくれる方のために使いたいのです。

金額の多寡というより
そこに信頼関係があるのか。
ということなのだと思います。

2014.11.29
Diary


小さな挑戦

このSHIMAUMA DESIGNのwebサイト、前回もお伝えしましたが、アートディレクションからすべて井上さん[ inncnc.com ]にお願いしました。
今回は、どうして自分で作らずに、井上さんにお願いしたのか…を振り返ってみたいと思います。

僕は、プライベートワークでは、いつも小さな挑戦をします。はじめてのこと、試してみたい冒険的なこと。このサイトを作る時もいくつかの挑戦を試みました。

1.これまでに自分が手掛けていないタイプのデザインにすること
2.アートディレクションを誰かにお願いすること
3.新しい方とお仕事すること
4.なるべく会わずに進行してみること
5.クライアントになってみること

「4」は置いておいて、つまるところ誰にお願いするのか?というキャスティングにつきると思いました。自分のサイトで何がしたいのか、目的は明確だったので、その想いをくみ取ってくれる方。もちろん、自分でディレクションするという方法もなくはなかったのですが、より新しいものが生まれてくるために、アートディレクションからお願いしよう!と思ったのです。

現実的にできるできないは置いておいて、誰にでもお願いできるというアイディアにワクワクしました。どなたにお願いしようかな、と。そこで、以前から素敵なサイトを作られている井上さんにお声掛けすることに。でも、正直かなりドキドキもしました。実は1度しか面識がなくて…デザイン系のイベントで名刺交換させてもらったことがあるくらい。でもいつもFacebookなどで拝見する、井上さん制作のサイトが素敵で…琴線にふれるものがありました。そこに込められた情緒感というか、優しいまなざしというか、モチーフへの愛情みたいなものを感じて…この方に作ってもらいたい!と意を決してお願いしました。
井上さんもかなり驚かれたようですが、快諾いただけて。この小さな勇気が必要だったキャスティングで、このサイトでの僕の仕事の9割が完了したようなものです。

「4.なるべく会わずに進行してみること」も小さな挑戦でした。あまり面識がないのでメールの方が気兼ねがないのですが、逆に面識がないからこそ、ニュアンスなどは電話とかスカイプなどで伝えるべきなのかもしれません。でも、極力それをせず、メールでのやり取りだけでやってみました。それは、なんとなく往復書簡のような感じで。レスポンスの間が待ち遠しくもありました。
今、遠方のお客さんとのお仕事も増えてきていて…その際は、直接お会いしたり、お電話したりしてコミュニケーションするのですが、それらを究極までそぎ落としたらどうなるのか?という実験でもありました。なるべく僕は情報や想いをお伝えして、それを井上さんはくみ取ってくれて、素敵な提案をしてくれました。

今回、自分がクライアントになってみて、たくさんのことに気がつきました。普段はデザインやコピー、写真やイラストや…どなたかにお願いをしていても、それはディレクターという制作者側の立場で。あぁお客さんってこんな風に考えているのかなぁと、実感を持って経験できました。お前ほんとにデザイナーかよ!っていうとんちんかんなお願いを僕は井上さんに何度かしていて…それに対し、できないとはっきり伝えてくれた上で、僕の想いをくんで、こういう方法がありますよと言ってくれて、とても安心できました。

自分のサイトをほめるのも大概にせーよ、なのですが、バックの淡いピンク色がとても気に入っていて(密かに次の名刺はピンクにしたいなって思うくらい)。でも自分で作っていたら、このピンクという発想はなかった。なのに、出来上がったサイトはすごく僕っぽく、SHIMAUMA DESIGNっぽくて。そういうデザインを構築してくれて、あらためて、良い方にお願いできたのだなぁって思います。

僕は今回、自分の一番得意なデザインを手放すことで、新しい出会いやいろいろな学びがありました。これからも、小さな挑戦を続けて、自分を成長させていきたいと思っています。

井上さん、素敵なサイトを本当にありがとうございます。

余談ですが、意を決して井上さんにご連絡した直後、井上さんの前職、[ COMMUNE ]の上田さんから連絡が。ご縁を感じてCOMMUNEで運営するMEET.というスペースをシェアすることに。この文章を今、MEET.で書いていてなんか不思議な感じです。
このMEET.というスペース、これからいろいろなものが生み出されていく刺激的な場となりそうです。MEET.についてはまたあらためてお伝えしますね。

2014.11.28
Diary