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東京オリンピック エンブレム問題に思うこと その1

この問題に対する想いを、何度エントリしようと思ったかな。
似ている似ていないと騒がれてから、やぁそれは違うよ
うん、その通りだなぁ…と状況が変わるたびに
さまざまな方の意見を聞いて読んで。
あきらかにおかしいこと、間違っていることもあれば
もう事実は差し置いて、気分だけの問題になっていったり。

何度も書こうと思っては書けなかったのは
一番はこの問題が複雑すぎたから。
複雑というか、ひとつひとつは明確なんだけれど
問題がいくつもあって、それぞれに違う想いがあったから。
そのいくつもの問題が混在していたり
ある特定のことにしか触れなかったりでは
自分の気持ちが表現できなかったから。
この問題を語るには遅きに失したかもしれないけれど
今だから、ようやっと言えるのかもしれない。
というか、問題について語るのではないな…
今回の問題で感じた、自分の想いを語るだけだな。

僕の同業者の方も、多くの方がこの問題に言及しているように
今回の件で、僕もこのデザインに関わる業界も
たくさんの示唆をもらえたと思う。
それが今回、唯一といっていいかな…の良い点。
そして今回、僕がイヤな点は2つ。
ひとつは、きらいなものは叩いてもいい、という風潮。
もうひとつは、誰もしあわせにならないことに
労力を割いて、調べて発表して、悪意の渦が高まること。
真実の探求…というより
悪もの作りがエンターテインメントとなっていること。

悪いものを見過ごしてとか
見なかったことにして…ではなくって
もっと、その時間つかって、自分がしあわせになることを考えたり
自分の大切な人とすごしたり…
良い方に回していくサイクルにパワーを使う社会であってほしいな。
きらいきらいがあふれる世の中より
すきすきがいっぱいの生活がいいな。

って、本題に入る前に、すでに長い。
では、これからこの問題に対する想いを
今、自分が感じていることを
少し先の未来の自分に伝えるために記します。
ぼくは、これらの言葉で
誰かを説得しようとも、糾弾しようとも、擁護しようとも思いません。
第一、僕という側から見た感じた状況だけだから。

以下の内容です。
全てを読むには時間がかかると思うので
ご興味あるところだけでも読んでもらえたら。
そして、あまりにも長いので、何度かにわけて公開していきます。

 (第一弾)
  1.そもそも、似てる?似ていない?
  2.盗作なんだろうか?
  3.似ていることの是非
  4.好き?嫌い?

 (以降、順次公開。タイトルは予定)
  5.「作る」行為。「決める」行為
  6.招致ロゴの評判が良いわけ
  7.デザイン業界というムラ社会
  8.トートバッグ問題
  9.想像力を欠いた世界

これ以上、この問題が負担になる方が出ませんように。

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1.そもそも、似てる?似ていない?

今件の発端となった「似ているのか?似ていないのか?」。
僕が感じる限りでは、
あきらかに似ているという声に対して
デザイナーたちの多くが「似ていない」としたり「問題ない」としていて
さらに、それに対して他の方たちが「なぜ、あれが似ていないのか?」と
不信感を持たれていると感じます。

僕は、「違うけれど、似ている」と思います。
似ている…というのは、とても乱暴にいうと
しょう油とソースって同じじゃん!という感覚に近いです。
しょう油とソースを似ている…と思う方は少ないと思うのですが…
それは、しょう油とソースの一番の機能である「味」が認識できているから。
「味」や使用されるシーンやもたらされる感覚がわかっていると
しょう油とソースが似ている…とは言いがたい。
でも、同じ調味料であること、液体であること、色も黒っぽいこと、
同じテーブルに並ぶこと…など「味」以外はむしろ似ている面が多い。
だから、その観点で言うと、しょう油とソースはとても似ている。

今回のエンブレムではどうでしょう。
似ているとされて持ちあがっているシンボルやマークは
確かに見た目似ている。
構成されるエレメントや、配色。
でも、どうそれが使用されるか…という機能面では全く違う。
だから、僕は似てはいるけれど、違うデザインなので問題ないと思う。

ただ、しょう油とソースと決定的に違うのは
デザインでは、見た目も大きな機能のひとつ。
むしろ最重要機能のひとつ。
そこが似ている…というのは非常につらい。
これを全く似ていない…というのは
気持ちはわかるけれど乱暴だなぁとは思う。

僕は、似ていても問題ないんじゃないかと思うけれども
もし、選考前に、あのベルギーのシンボルが広く認知されていたら
いろいろと違っていただろうと思う。

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2.盗作なんだろうか?

似ている。とは思うけれども盗作・盗用なんでしょうか?
想いとしては、明確に盗作ではない!と思うし
事実としては、盗作かどうかは本人しかわからないこと。
その上で、佐野さんご本人が違う、というのだから違うと思う。
少なくとも僕には、佐野さんが言われていることを疑う要素は
これっぽっちもない。

  今回、いたるところで聞かれるパクる…という言葉。
  嫌いなんです。
  盗用って言葉が好きなわけじゃないけれど
  パクるという語感の軽さ。
  元のアイディアへのリスペクトの薄い感じ。
  盗むことへの罪の意識の軽さ。

僕が明確に、今回のエンブレムが盗作ではない!と思うのは
機能面で全く違うデザインであることの他に
盗作するメリットが佐野さん自身にない…
全くとは言わないまでも、リスクと比べてると、全くないに等しい
という想いもあります。

でも、この問題に関しては、どこまで行っても
思う思わないという議論から先には進まないこと。
それが、今回は疑わしい(と思う)という声を出す人がたくさんいただけで
実際にはどうかわからないことを
限りなく黒に近いグレーにしていく…というのが
とても気持ち悪く感じました。

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3.似ていることの是非

そもそもの似ていて良いのか?悪いのか?
で言うと、似ていない方がいいのだけれど
似ていることが完全に悪、ではないと思っています。

たとえば、今回問題にもなっている配色。
あれは日本、和をイメージさせるオーソドックスな配色として
とてもポピュラーなものです。
そして多くの方に、日本ぽいと認識されるからこそ
使用される配色であって
その配色が似ている…という指摘は
むしろ、そのイメージの色を採用しているので、ナンセンスです。

今回、この似ている似ていない問題は
僕にたくさんの示唆を与えてくれました。
似ていることは、オマージュやサンプリング、パロディ…という表現にも
つながります。
また、親和性を持たせる、時代性を合わせるために
似せることが必要となる側面もあります。

それとは別に盗作やパクリと呼ばれるもの。
僕自身もアルファベット一文字のシンボルを数種類制作して
お客さんに提案した際に、その中のひとつが
すでに使用されていたものと似ていたことがありました。
また、普段からいろいろなものを見て吸収して咀嚼して…
ときには、あまりにも好きなものに自然と似てきてしまうこともあったり。
よりオリジナリティの高いものを…との想いを強める反面
オリジナリティだけを追求したインパクトだけ重視した
機能しないデザインもしたくないな…
と考えさせられることが多かったです。

でも、おそらく多くの作り手やデザイナーは
安易にパクろう…というよりは
むしろ、その逆で…
どこかに似ているものがあるんじゃないだろうか?
昔見たあれに似過ぎてはいないだろうか?
オリジナリティが出せているか?
他の人が、同じようなものを考えていないか?
…似ていることへの、恐怖にかられているのじゃないかな。
少なくとも、僕はそうです。

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4.好き?嫌い?

この問題を複雑にしていたものに
このエンブレムが好きか?嫌いか?…という気分の問題が
混ざってしまったことが大きいかと思っています。

エンブレムに触れたときに「あれ?」と思う人たちがいて
その違和感に、「盗作疑惑」という受け皿が出来てしまって。

これに関しても僕は少しずるい考えなのですが
エンブレム自身はそんなに好きではありません。
でもあの動画を見てワクワクした!
あぁこうやって展開していくんだ!って。
だから、気持ちとしては、エンブレムは大好きではないけれど
デザインは好き!

あの動画にも好き嫌いがあるのでしょうが
おそらくあの動画を見て
「エンブレムのデザインのキモ」を感じた方と
「エンブレム紹介のイメージムービー」と捉えた方が
いたのではないかな、と思います。
イメージムービーと感じた方には
あの動画とエンブレムは別もの…だったのではないでしょうか。
今回のエンブレムは、静止している状態ではなくって
あの展開性こそが魅力で
いわば、その展開できるシステムを構築したデザインだったのかな
と思っています。
(思う、思っていますが多くてすみません。断定できないことばかりだから。)

オリンピックでは
様々な会場のデザインや、その周辺のサイン、告知用のポスターやパンフレット
様々なグッズ、webサイト、映像、スタッフのユニフォームなどなど
それはもう様々なものが生み出されるでしょう。
従来までのオリンピックエンブレムでは
エンブレムを入れる、配色でトーンを揃える…など
エンブレムと他のものをデザインするあいだのルールがあいまいだった。

今回は、あの分割できるエレメントがあるおかげで
様々な場所や形、広いところ狭いところ、映像でも紙でも…
どこで展開しても、「あぁ東京オリンピックだ!」と認識できる強さがあった。
誰が作っても、ある程度のクォリティと、イメージを保つことができる…
そのルールを構築したデザインでした。

1964年の東京オリンピックでのピクトグラムによるサインの統一。
今回のエンブレムがこのまま使用されれば
これまでにない、統一感を持ったデザインが、オリンピック全体で為されるはず。
また、オリンピックに新しいデザインが導入される!
その予感にわくわくしました。
だから、エンブレムそのもののデザインは先進さや華やかさは少なくても
そのオリンピック全体のデザイントーンを構築するというシステムのデザインは
これまでにない、新しい試みでした。

でも、それが、多くの人には伝わらなかったのだと思う。
エンブレム、そのものだけを感じていた方。
嫌いというフィルターに阻まれて、それ以上先は受け入れられない方。
発表の段で、もう少し丁寧な、エンブレムの展開性を伝えることが
必要だったのかな…と思う。
あのデザインの一番大切な部分が、伝わっていなかった。
きっとわかってくれると思っていたと思う。僕もそう考えると思う。
でも、伝わらなかった。
この意思疎通のできてない部分こそが
デザインする側に示唆された大きな問題だと思う。

そうして、好き嫌いで言ってしまうと
嫌いなものはしょうがない。
その奥にどんなコンセプトや展開があろうと
好きになるのは難しいと思う。
ただ、これほど多くの方が見るもの。
全員が好きになるものはできないし、
全員が嫌いにならないものは、そつがなさすぎてパワーがないし。
もう少し、自分が嫌いなものを許容する
寛容な気持ちがあってもいいのではと思う。
俺は嫌いだけれど、まぁええじゃないか…と。

ちなみに、僕は近年のオリンピックのマークは
かっこわるいなぁ…とテレビを観ながら
失礼ながら思っていました 笑。
自分がずれているのか? まぁええじゃないか…と。
だから、今回のエンブレムを見たときに
おー!今っぽい!と思った。
皆さんも過去のを見てみてほしいな。1964の東京のだけじゃなくね。

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では、異様に長いので、続きはまた後日に。

2015.8.27
Diary


jobin.さんの展示 私平線

shiheisen_iogo

造形作家jobin.さんの展示が
9/28ーー10/4
モエレ沼公園 ガラスのピラミッドで行なわれます。

僕は今回そのビジュアル面や告知関係のお手伝いをしていまして。
タイトルは「私平線」。
しへいせん, と読みます。

jobin.さんの作品で浮かび上がるいくつもの地平線や水平線…
いくつかの展示による高低差から生まれる浮遊感。
あなただけの…線が見つかるかもしれません。

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jobin. solo exhibition
私平線

2015.9/28 mon.ーー10/4 sun.
モエレ沼公園 ガラスのピラミッド 2F展示室
[入場無料]
開催時間
9/28 mon.ー10/2 fri. 12:00ーー20:00
10/3 sat.ー10/4 sun. 10:00ーー17:30
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とても素敵な空間になると思います。
jobin.さんのファンの方はもちろんですが
ぜひ, 多くの方に観ていただきたいな。
開催期間が短いこと, またモエレ沼公園での開催なので
ぜひ, ご予定に。



ここからは, 超個人的想いで…いつも通り長くなりそう…
jobin.さんについては, 詳しくはこちら[ jobin lab ]をご覧いただきたいのですが
jobin.さんの作品…モビールなどによって生まれる空間は
ぜひ実際に体感してほしいのです。

僕は昨年7月, 北広島でのグループ展「cute」で
はじめてjobin.さんの作品に触れました。
「cute」では, jobin.さんと僕の展示は隣で。
設営の日, 遅れていった僕が会場に入ると
jobin.さんは展示の最終調整中。
そのモビールの作品, 空間を見て「やべぇ…」と
強烈にあせった記憶が今も甦ります。

グループ展で隣のかたの展示がパワーがあったときに感じるあせり。
「すごい」を通り越して「やべぇ…」。
会期中も自分の展示スペースに置いた椅子に座り
ぼぉーーっと… 
jobin.さんの作品 [おぎなわれる領域] に包まれている自分がいました。
僕のモビールという概念がその時から全く違うものになりました。

今回もあの時のような感覚に出会えるのがとても楽しみ。
しかも今回はあせりがなく, 純粋に作品に包まれることができる 笑。
あの時の動物たちに再会できるような気もしています。

今回の展示「私平線」には
いつも以上にjobin.さんの想いがあるように感じて。
これまでの集大成。そしてこれから先に進むような感覚を
ロゴデザインに込めています。
「J(jobin.)」が「,(立ち止まり)」そして「一(先に進む)」

ぜひ, 地平線を感じられる広大な秋のモエレ沼公園で
空を感じられるガラスのピラミッドで
あなただけの「私平線」に出会っていただきたいな, と思っています。
きっと, とても気持ちのよい空間になるんだろう…と思います。

sora

2015.8.20
Event